ゆるりと継承語

日本語を家庭に持ち込む

このサイトを通じ、これまでいろいろなことを述べてきましたが、自分が我が家に日本語を持ち込んだのは突き詰めれば自分自身のためだったと思っています。もちろん、男親の名前が自動的に子供に受け継がれる社会なので(しかも現地語でありえない発音の名字・・・涙)、将来、就職などの書類審査において差別されるかもしれないことを前提に(それが普通に起こることは各種研究から指摘されています)、履歴書に「日系です。日本語できます」をアピールするという理由もあるにはありました。

しかしそれでも、そんな問題は沖合にぼんやり揺れる蜃気楼のようなもので、やはり目の前にはっきりと見えていたのは自分自身が改めて日本と関わることの楽しみでした。遠く祖国を離れ、世知辛い現地社会で我が身の語学力の低さにコンプレックスを抱き、対人関係で肩身の狭い思いをしているなら(はい、全部自分自身のことねw)、堂々と祖国を懐かしめばいいと思います。それを恥じる必要はないし、鼻の穴を膨らませて「子供のため!」と言う必要もないかと思っています。むしろ、「こんな自分のために漢字の勉強をしてくれてありがとう」ぐらい言わないといけないのかもしれません。

 

いろいろやってきましたw

では、これまで自分はどんなことをしてきたか。ちょっと思いつくままに書き留めてみましょう。その変遷はネット環境の発展と並行して進化(?)してきました。

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日本語への接近

いきなりですが、第一子をワンオペで育児していたおっさんの心の拠り所は「手抜きぐらいがちょうどいい」という格言(妄言?)でしたw。

 

今も世界のどこかで完璧な育児を目指そうと頑張っておられる方がいるかと思うんですが、どんなに頑張ってもその頑張りは二人目、三人目となれば減退してゆくものです。それでも子供はなんだか育ちましてw。

教育についてもまた然り!

 

ええ、三人目、四人目は日本語継承なんてな〜んにもしませんでしたw。

 

一応、三人目である次男には補修校断念と引き換えに、自宅学習でひらがなは覚えさせましたが、それだけ。日本語の読み・書きのハードルは高すぎますし、かつベルギー社会でそれが即役に立つものでもないことからリソース割く気も起こりませんね(現在進行形!)。将来、「ひらがなはわかります(キリッ)」なんてドヤ顔させるのもみっともないので(お父さん日本人なのにw)、いっそのことそれも忘れてもええよ・・・みたいな。

 

ということで、第三の男たちには日本語を継承させるという意思もない父でしたが、一方で子供がこちらの話す日本語の指示がわからないというのも都合が悪いなぁとは思っていました。

 

父「台所から○○持ってきて!」「靴下はいて!」「鞄に○○入れた?」

子供(固まったまま)「???」

 

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日本語能力試験 N3対策 初手

長く補習校に通っていた国際児にはさほど難しいミッションではないと思いますが、通っていたとはいえ低学年でやめてしまった国際児が日本語能力試験にチャレンジするとどうなるかについて、子育て実践者の経験と日本語講師としての洞察を通して考えてみたいと思います。

我が家の四人の子供のうち補習校の経験があるのは上二人だけ。一番上は小学校三年修了時、二番目は同一学期修了時に自主退学と相成りました。下の二人は親の気力もリソースも尽き果てたこともあって、不戦敗という感じです。こんなちょっと半端者の補習校経験組二人に合格に向けての秘策はあるのか?・・・です。

半端とはいえ、補修校経験組はやはり日本語の基礎があります。日本語を聞く耳も持っています。それらを糧に、二人とも自分の興味を通して日本語に触れてきました。そんなこともあって日本語能力試験のN5とN4は、結果的には大した努力もせずに合格することができました。問題があったとすれば、小学校五年生でN5に挑戦した長男にとって、漢字や語彙よりも大人の文章を読んで理解するということの方が難しかったかと思います。それが読解問題の成績にも反映されてしまったというのが私の見立てです。この点、こちらの小学校では日本の様な国語教育(現地事情で言い換えればオランダ語教育になります)はあまり熱心にやっていないので簡単ではないです。

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One of themの心境

ずっと放置状態になっていましたが、可能な範囲で再開してみようかと思います。

そもそも当ブログの更新が止まっていたのは、現地で育つ子供たちにとって日本語を継承させることにどれほどの価値があるのか自問するようになったからです。いろんな人にインタビューをし、論文を読み、日本学科にやってくる日系国際児、とりわけ補修校卒業生の姿を見るにつけて、この問題について考えるモチベーションがかなり後退していました。

そんな風に後ろ向きの毎日だったんですが、やはりいろんな事例を目にした現役の育児実践者として、同じような悩みを抱えているかも知れない方にとって何かお役に立てればと思い、その時々に頭の中を占めているものぐらいは書き残しておこうかと思い直しました。チラシの裏のラクガキの様なものにしかならないかも知れませんが、もう少しがんばってみようと思います。

とりあえず、昨年受けた上の二人の日本語能力試験の結果から記しておこうかと思います。結果は両名ともN4無事合格できました。娘は初めての受験でしたが、パーセンタイル順位98.2、聴解満点での合格です。一方、長男の方は三年前のN5の結果と同じで、かなりギリギリでの合格でした。特に読解の成績が悪いのが特徴です。文章を読むのはオランダ語でも怪しいので、そのへんは慣れの問題もあるのかなと思っています。日本語能力試験対策という枠を超えて考えてみなければいけないかもしれません。

しかし成績はともかく、日本に留学すればコンビニ・バイト採用の一つの目安ともなるN4レベル合格なので、とりあえず日本でのサバイバルの目処は立ったのかなと一安心でもあります(受験料も無駄にならなかったし)。両人とも今年はN3に挑戦したいなんて言っていますので、イースター休暇後には改めてそのための準備をしようかと思っています。

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補習校に通わない(通えない)子供の継承日本語をどうするか

入学シーズンですが・・・

もうすぐ3月になります。日本では入学シーズンを控え、新一年生を抱える家庭では新生活に胸躍らせる時期かと思います。我が家も新一年生に相当する御仁が一名おるんですが(笑)、なし崩し的に多分入学のお祝いをすることはないかなあという立ち位置で胸がぞわぞわしてます。

経験的に言わせていただければ、補習校に入れればそこそこ日本語は定着するのは確かなことかと思います。もちろんそれだけの資源とエネルギーの投入が必要なわけで、涙なしには語れない物語があるのも真実。いいところだけをつまみ上げたところで詮無いことで、我が家にはもうそういったリソースもエネルギーもないと自分に言い聞かせる毎日です。

 

継承日本語についての考え方

IMG_2797以前は継承日本語を研究テーマとしていろいろとやってきました。そこで見えてきた継承日本語教育の本質があります。それは継承語は家庭内の問題なので「やらねばならない」というものではないということです。当たり前と言えば当たり前なんですが、どうも学習させる理由の根底に「(日本人親たる)自分のために」がチラチラ見えたりしました。このこと自体を否定するつもりはありません。海外暮らしで折に触れて自分の出自に触れることは大きな癒しになりますし、パートナーに先立たれ、異国で余生を外国語に囲まれて過ごすというのも辛いもの。それに備えて子供に日本語を習得させるのもアリかと思います。胸を張って「自分のためです」と言えればいいんですけどねぇ。

ただ補習校に通わせないことでその時間とお金を別のことに使えるのも確かで、各家庭で子供の人生にとってより大切なものと思えるものを判断し、周囲はそれを尊重するという空気があってもいいと思います。極端な話、「日本語いらない」も選択肢としてはありで、そうした選択もリスペクトされて然るべきかと思います。

自分は上の二人が補習校を自主退学して以後、家庭で個人的に継承語教育をやってきました。それは日本語能力を伸ばすというより、日本人親たる自分と子供を日本で繋ぐという感じのぬるい取り組みでした。日本の映画を見たり、プラモデルを作ったり、アニメを見たり、気がつけば日本史に強い興味を持つようになっていたのでヨウツベにある歴史番組を見たりもしました。海外に暮らしながら、自分が関心のある懐かしい日本を子供と共有できるのは大きな癒しとなっています。

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過ぎたるは何とやら

子供に日本語を継承させようとする際によくぶち当たる疑問に

 

これ、必要かな?でも、まあ、いらんかな、この子らには。

 

というのがあります。前もって「ここまでは!」というゴールを設定しているわけではないので、漢字をどれだけ覚えるかとか、国語の教科書がすらすら音読できるようになるとかといった到達目標としてのガイドラインはありません。しかし同時に、「日本に関心を持ってもらいたい」との漠然とした思いはあります。これは一種の方向づけであり、日本語継承に関わっている大抵の日本人の親御さんとこうした感情は共有しているのではないかと思います。これが、

 

継承日本語教育は到達目標ではなく、方向目標を掲げるべきである。

 

と私自身が考える所以であります。

 

以上のような理由から、日本社会や文化、日本語そのものに関心を持ってもらおうと日夜努力しているわけですが、日本に連れて行って楽しい思い出を作るのも、日本のドラマや映画を楽しむのも、それもこれも全てこの方向づけのためということになります。

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継承日本語とはなんぞや?

2005年に海外在留邦人数は100万人を突破しました。その後もこの数字は大きくなっているようですが、そのうち30%程度が永住予定者とされています。ベルギーでは永住予定者の割合は20%と若干低くはなっていますが、増加傾向にあるのは世界的な流れと同じです。この傾向はとりわけ国際結婚によって移住してきた日本人女性の増加を反映したものだと言われています。

こうした海外永住予定者の直面する重要な問題の一つが、子供への日本語継承の問題です。それは子供が生まれる以前から必ずと言っていいほど頭をよぎる問題でもあり、生活に直結した関心事です。子供が実際にできれば感じることではありますが、家族とのつながり方に関係する事柄であることを思えば、それは育児の一部分と言っても過言ではないのかなと思ったりもします。

にもかかわらず、継承語の問題は実際には育児と離れた視点から扱われることも多く、そこに「なんか違うぞ?」感というか、噛み合わせの悪さを感じるところでもあります。この違和感のようなものがどこからくるのか考えてみました。

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