移民統合の現実

今朝の(無料)新聞記事からです。ベルギーの移民問題に関するものです。

日本でも昨今、人口減少による将来的な労働力不足が危惧されています。それを補うために移民を受け入れようとの議論がありますが、近視眼的に当面の労働力不足は解消できても、長い目で見るとまた別の深刻な問題をもたらしはしないかと考えさせられる事例です。

同じ研究レポートに基づいた記事ですが(記事を書いた人が全文精読したかどうかは不明)、オランダ語版とフランス語版で記事の長さ、タイトルの付け方、視点が違うような気がしますので、両方取り混ぜて紹介してみます。

タイトルは次の通りです。

オランダ語版
“Marokkaanse Belgen raken gedemoraliseerd door discriminatie.”
「モロッコ系ベルギー人は差別によって落胆している」

フランス語版
“Les Belgo-Marocains ont le blues.”
「モロッコ系ベルギー人は気が滅入っている」

オランダ語の方はかなり直接的に内容を述べるタイトルになっています。対するフランス語版の方は特殊な言い回しを使った味のあるタイトル付けです。

記事の長さはフランス語版がオランダ語版の1.5倍といったところでしょうか。ただし、オランダ語の方が名詞が短くまとめられるきらいがあるので、内容の寡多は実際の記事の長さほどではないように思います。要は、違いとしては、問題のどこに焦点を合わせているかということでしょう。

 

その要点は次の通りです。

共通点
・教育の機会が広がり、移民の間でもベルギー人同様の高い学歴を得られるようになったが、彼らは就職等で差別を感じている。
・トルコ系移民はモロッコ系より状況はまし。

オランダ語版

  • これら移民は差別によってやる気が阻害されている。
  • 近年、こうした状況に反応したエスニック・アイデンティティが作られている(具体的にどういったものかは記述なし)。
  • 言語習得と教育は統合促進に寄与していない。

フランス語版

  • 移民の所得状況は過去の調査時より改善が見られる。
  • ムスリムであることへの誇りを持つが、実際の宗教的態度は個人化している。
  • 基本的な民主主義的価値観はベルギー人とほぼ共有されているが、性と安楽死に関してはより反対の態度が強くなる。

 

一見して、フランス語版は事実の面に光を当て、逆にオランダ語版は事実の裏に見えるモロッコ、トルコ系移民の内面的態度に重きを置いている感じがします。実際に、後者が関心を持っている部分が元のレポートにもしっかり記述されているのかどうかは分かりません。しかし、こういう研究の結果というものは、ただ現実だけを並べてみてもあまり意味はないので、そういう点ではオランダ語版の方が考えさせられる部分はあります。他方、事実の裏に隠れた結果を勝手にかつ安易に想像してしまうと、誤った方向に読者を追いやる危険があり、それがまた新たな差別や偏見を生みかねないところです。

 

ベルギーの黄金の60年代は多くの移民によって支えられました。当初の南欧諸国、それに続くマグレブ諸国からの移民も現在三世代目が社会に進出し始めています。南欧系の移民はヨーロッパ統合に後押しされ、既にその地位は約束された感があります。一方で、それ以外の地域からの移民を取り巻く問題がいろんなところで可視化してきています。

移民を受け入れるか否かという問題は目先の数合わせではなく、将来の世代にどんな不具合を生じさせるかというところまで含めて論じるべきものだと思いますが、日本では現在そこまで突っ込んだ議論がされているんでしょうか。

遠い異国の星の下、ちょっと気にしています。

 

スポンサードリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA