学習言語能力を考える

6年以上も前の先代ブログでのエントリーですが、日常会話能力と学習言語能力について触れたことがあります。算数の文章題を例に、日本語の学習言語能力の有無について書きました。日本語で算数の計算問題はできるが文章題ができないといった場合、日本語で文章を読んで理解し、そこから式と答えを導くという、ある種の具体的・抽象的両世界を行き来する能力の不備を疑ってみる必要があるのではないかというような内容です。日本人学校補習校の宿題を通して、実際に我が家で経験したことを元に考えたことです。

 

ここではとりあえず、日常言語能力あるいは伝達言語能力BICS, Basic Interpersonal Communicative Skillsを「日常生活において必要な言語能力(文脈と結びついた、簡単な情報のやり取りができる力)」、学習言語能力あるいは認知学習言語能力CALP, Cognitive/Academic Language Proficiencyを「教科の学習場面で必要な言語能力(文脈との結びつきを前提としない、抽象的なことを考えるような力)」としておきます。

 

さて、補習校にお子さんを通わされた方の中には「9歳の壁」という言葉をお聞きになった方がいらっしゃると思います。そこを境に学習内容、特に国語が格段に難しくなるという境界線です(日本の教育議論でも話題にはなっているようですね)。どう難しいかというと、抽象的な概念を扱う語彙が増え、授業や教科書の理解がきつく感じられるようになってきます。日本に暮らす日本人児童よりも普段の日本語インプット量が圧倒的に少ない国際児にとって、解決が容易ではない問題です。先の算数の例で言えば、文章題という具体的なものから計算式という抽象的なものを取り出せないといった感じになるかと思います(実際にはもっと複雑な世界だと思いますが)。

 

先に紹介した言語能力との関係で言えば、この「9歳の壁」とは日常言語能力が備わっていれば対応できる具体的な世界とそうではない世界を分ける境界であり、また、その超越は日常言語能力の完成を前提としているものなのだと思います。まさに壁の向こう側は、不十分な学習言語能力では適応が難しい世界です。

 

恥ずかしながら、我が家では上の二人は小学校三年生で補習校を強制終了しました。「9歳の壁」の意味はぼんやりと理解できたぐらいですが、もっと直接的に、日本語の学習言語能力を日本語を通して身につけさせる段階に入ったと感じ、それが我が家の二人には負担が大きすぎると思ったこと、そこで成果を得たり、維持することも不可能に近いように思われたのが終了の理由です。ま、平たく言うと、単にヘタレたわけです。

 

私自身は日本語は子供にとって「もう一つの母語」と考えていますが、それは子供にとっての第一言語=一番強い言語ではありません。というわけで、一番強い言語で現地校でのカリキュラムを通して理解力を鍛え、それを利用しながら日本語の学習言語能力向上を後発的に目指す方向に舵を切り換えました。この方法自体は言語学の研究領域でも支持されているやり方です(Common Underlying Proficiency説とか言われているものです)。

そのため、家庭学習への移行に際しては一応方針に「準拠したw」教科書らしいものも作りました。それを使い、実際に我が子や他の家庭の国際児を預かってみて感じたことは・・・、

 

やはり第一言語による学習が進んでいるならば日本語で社会科や理科の内容も理解が得られやすい!

 

というものでした。

 

 

日本語の継承をどこまでのレベルにするかは、第一義的には親の決断次第です。私も漠然と日常会話能力と学習言語能力の違いを感じてはいましたが、当初どこまでを目指そうという具体的なイメージはなかったです。ただ、子供が大きくなるに従って、なんとなく「(自身が親からしてもらったように)自分の子供時代の日本について話ができれば楽しいかな」などと思いながら、日常会話以上のものを視野に入れるようになりました。

現在、それは具体的に日常会話能力(話す・聞く)と常識力(日本に関する一般的知識の吸収とそれについて会話ができるぐらいの力)の獲得といった形になりました。それぐらいを目指すことで、特に無理をすることもなく、日本のニュースを見ながら日本語での親子会話が楽しめたりする程度に今はいます。日本語能力試験のN2合格は絶対無理ですがw。

 

継承日本語能力は一見、現地教育と無縁のもののように見えますが、後者を通じた現地語=第一言語での学習言語能力の向上が意外と日本語能力向上に貢献している部分があるように思います。経験的にも、様々な研究結果からも、かなりの確信を持ってそう感じます。

 

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